去る6月6日、医事法Ⅰ(医療と法)のゲストスピーカとして、全国骨髄バンク推進協議会会長の大谷貴子氏にご講演を頂きました。大谷氏は、大学院在学中に慢性骨髄性白血病と診断され、お母様からの骨髄移植で病気を克服なさったことをきっかけに、当時まだ日本に存在していなかった骨髄バンクを設立。以後、20年以上に渡って、ドナー登録の呼びかけ、患者のケアなど、全国を飛び回りながら骨髄バンクの中心として活動をしていらっしゃいます。
当日は前半の70分で骨髄バンクの基礎知識を絡めながら、大谷氏自身の発症から骨髄移植までの道のりをお話いただき、後半の30分はディスカッションとなりました。
テレビのドキュメンタリー等で大谷氏の経歴を知ってはいたものの、改めてご本人から聞く言葉の重み、パワーに圧倒され、大谷氏の話に参加者全員がぐいぐい引き込まれていきました。ご講演の中で、何度となく「ありがたいことに」という言葉がありました。医者、家族、友人、共に戦った患者、自分を取り巻くすべての人に感謝しながら日々を生きていらっしゃる大谷氏の生き方、姿勢にとても感銘を受けました。
後半はロースクールならではの内容ということで、骨髄バンクを取り巻く法律問題について。具体的には①ドナーは最終同意の後、骨髄提供意思の撤回はできないという規定が骨髄バンクに存在するが、その規定に拘束力はあるのか、②最終同意の立会人の資格について、各都道府県のバンクの裁量になっている現状だが(誰でも可というところが大半らしいです)、そこに弁護士の立会いは必要か否か、③骨髄バンクの先進国、アメリカでは移植を受けた患者とドナーの対面は積極的に行われているが、日本の骨髄バンクでは患者とドナーの接触は骨髄バンクを介して、匿名の手紙のやり取りが認められているにとどまり、対面は一切禁止されている。患者の立場からは自分の命を救ってくれたドナーに直接お礼を言いたい気持ちがあるのだが、ドナーが患者に対し金品等の要求をする恐れがある、また、ドナーが自分が骨髄を提供した患者が亡くなったことを知った場合に、自分自身を責めてしまう懸念もあり、ドナーの精神的ケアをするシステムを作る必要がある、等の理由から認められていないということ。このドナーと患者の対面を日本でも認めるべきか否か。
学生からは、「バンクの規定に法的拘束力を求めることは難しいであろう。だからこそ最終同意の重要性が増し、弁護士の立会いが必要になるのではないか」、「希望者には対面の選択肢を与えるべき。患者とドナーの対面は実現できたほうが、それを見てバンクに登録しようとする人も増えるのではないか。(アメリカではテレビの情報番組等で、ドナー登録の連絡先をテロップで入れながら、対面ドキュメンタリーが放送されているらしい)」、「ここまで骨髄バンクが大きな問題を抱えずにやってこられたのは、すべて善意の元に行われているから。安易な気持ちで登録する人を増やすだけだから、対面を殊更クローズアップするのは止めたほうがいい」などの意見が出ました。
いずれも簡単に答えの出る問題ではないので、もう少し時間があれば(4限のため延長ができず)さらに活発な議論ができたのではないかと思います。
大谷氏のお話を聞いて、毎日漫然と勉強するのではなく、この環境に身を置けていることに感謝しよう、困っている人の役に立てる弁護士になろう、LS入学時の気持ちを新たにし、日々の学習に対するモチベーションがさらに高まりました。
今、自分にできることは何なのか、将来弁護士になった時に何ができるのか、自分に問いかけながらの大変有意義な講演会となりました。
(医事法Ⅰ受講生)
